ネタ披露
秋田県 ペンネーム・TSUNAMU さんからの投稿作品
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昼の連続ラジオ小説 第二話
2005年も末のこと。
堀川率いるライブふすまは、業績を順調に伸ばしていた。
中でも、会社の好調を支えていたのは、インターネット関係の仕事でも、放送関係の仕事でもなく、文房具の売り上げだった。
文房具なんて小さな市場と、不思議に思う方も多いかもしれないが、この頃、文房具といえば、ライブふすまの「ごきぶりえんぴつ」「砂利消しゴム」が定番となっていた。
小学校入学を控えた子供から、入試に挑む受験生まで、この学歴社会を生き抜くために、幸も不幸もライブふすま製品と一緒に歩んでいく、それが当たり前だった。
そして、年も終わりをつげようとしている頃、ライブふすまが新製品を出すらしいという噂が業界内を駆け巡った。
その情報は、文房具業界の老舗である、オオクヨの人間にももちろん伝わった。
ここに、ある一人の男がいる。
彼は、新製品の開発に携わるわけでもなく、かといって営業もできず、なんとか庶務課ということでおさまっているが、今年で60、来年の春で定年である。
オオクヨに勤めるこの男、名を磯山といった。
磯山がいつものようにやることもなく、ネットサーフィンをしていると、例のライブふすまの新製品の書き込みを発見した。
「ライブふすまの新しく出るやつ、+ノートっていうらしい。プラスノートってどういう意味なんだろう」
「+ノート」という文字を見た瞬間、磯山は背筋の凍る思いをした。
磯山はあわててライブふすまにいる古くからの知人に電話した。
「今度のお前の会社の新製品、マスノートというらしいじゃないか?」
磯山の声は震えていた。
「さすがに情報早いな。そう、マスノートっていうんだ」
知人の名は川田といった。
「お前、あれ知っててそんな名前つけたんだろうな」
磯山は言った。
「もちろん、あれだろ。死神が落としたデスノート、生霊が落としたマスノートってやつだろ。
社長にもそれ言ったらさ、迷信だ迷信ってかわされちゃってさ。
むしろ、そのぐらい迫力のある名前の方がいいんじゃないかって話になって、結局マスノートになったんだ」
「お前は何もわかっちゃいない」
磯山は電話を切ると、あまりの恐怖に自分のデスクから一歩も動けなくなった。
世間では死神が落としたデスノートをめぐって賛否両論がおこっているらしいが、それはあくまで21世紀の話で、20世紀はまさにマスノートの時代といっても過言ではなかった。
マスノートのマスは、+の字からもわかるように、人間に優劣をつけることである。あいつとこいつ、どっちが優れているか、決めるのである。
例えば、
優れているのは、木村
劣っているのは、稲垣
という具合である。
このノートがやっかいなのは、一度、劣っていると書かれると、一生、人から下に見られてしまうということである。
そして、このノートが危険なのは、このノートを持ってしまったら、常に人と人とを比べてしまうことである。
最終的には、誰が一番優れているか、それを決めるまで、このノートは威力を発揮し続けるのだ。
このマスノートが問いかけた、究極の選択というのがある。金持ちで悪いやつが優れているか、それとも貧乏でいいやつが優れているかというものだ。
さすがのマスノートもこの問題だけは、判断しかねたのか、ある質問を両者に投げかけた。
「あなたがたは、マスノートの存在を信じますか?」と。
すると、金持ちで悪いやつは、
「世の中金だ。金以外の物は信じない」
と答え、貧乏でいいやつは、
「僕は人の絆を一番大事にしている。それ以外は信じない」
と答えた。
その質問で、真実が見えたのか、マスノートはついに判断を下した。
「両者とも優れているとはいえない」
それが答えだった。
この時初めてわかったことなのだが、マスノートは両者とも劣っているという判断をすることもあるのだ。
世の中にマスノートが出回ってしまう前になんとか回収しようと、動き出す磯山。
しかし、成績も悪く運動もできない一人の少年が、マスノートを手にしてしまい・・・・・。
第二話 完
次回 「デスノート」「マスノート」、そして「デシタノート」
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昼の連続ラジオ小説 第二話
2005年も末のこと。
堀川率いるライブふすまは、業績を順調に伸ばしていた。
中でも、会社の好調を支えていたのは、インターネット関係の仕事でも、放送関係の仕事でもなく、文房具の売り上げだった。
文房具なんて小さな市場と、不思議に思う方も多いかもしれないが、この頃、文房具といえば、ライブふすまの「ごきぶりえんぴつ」「砂利消しゴム」が定番となっていた。
小学校入学を控えた子供から、入試に挑む受験生まで、この学歴社会を生き抜くために、幸も不幸もライブふすま製品と一緒に歩んでいく、それが当たり前だった。
そして、年も終わりをつげようとしている頃、ライブふすまが新製品を出すらしいという噂が業界内を駆け巡った。
その情報は、文房具業界の老舗である、オオクヨの人間にももちろん伝わった。
ここに、ある一人の男がいる。
彼は、新製品の開発に携わるわけでもなく、かといって営業もできず、なんとか庶務課ということでおさまっているが、今年で60、来年の春で定年である。
オオクヨに勤めるこの男、名を磯山といった。
磯山がいつものようにやることもなく、ネットサーフィンをしていると、例のライブふすまの新製品の書き込みを発見した。
「ライブふすまの新しく出るやつ、+ノートっていうらしい。プラスノートってどういう意味なんだろう」
「+ノート」という文字を見た瞬間、磯山は背筋の凍る思いをした。
磯山はあわててライブふすまにいる古くからの知人に電話した。
「今度のお前の会社の新製品、マスノートというらしいじゃないか?」
磯山の声は震えていた。
「さすがに情報早いな。そう、マスノートっていうんだ」
知人の名は川田といった。
「お前、あれ知っててそんな名前つけたんだろうな」
磯山は言った。
「もちろん、あれだろ。死神が落としたデスノート、生霊が落としたマスノートってやつだろ。
社長にもそれ言ったらさ、迷信だ迷信ってかわされちゃってさ。
むしろ、そのぐらい迫力のある名前の方がいいんじゃないかって話になって、結局マスノートになったんだ」
「お前は何もわかっちゃいない」
磯山は電話を切ると、あまりの恐怖に自分のデスクから一歩も動けなくなった。
世間では死神が落としたデスノートをめぐって賛否両論がおこっているらしいが、それはあくまで21世紀の話で、20世紀はまさにマスノートの時代といっても過言ではなかった。
マスノートのマスは、+の字からもわかるように、人間に優劣をつけることである。あいつとこいつ、どっちが優れているか、決めるのである。
例えば、
優れているのは、木村
劣っているのは、稲垣
という具合である。
このノートがやっかいなのは、一度、劣っていると書かれると、一生、人から下に見られてしまうということである。
そして、このノートが危険なのは、このノートを持ってしまったら、常に人と人とを比べてしまうことである。
最終的には、誰が一番優れているか、それを決めるまで、このノートは威力を発揮し続けるのだ。
このマスノートが問いかけた、究極の選択というのがある。金持ちで悪いやつが優れているか、それとも貧乏でいいやつが優れているかというものだ。
さすがのマスノートもこの問題だけは、判断しかねたのか、ある質問を両者に投げかけた。
「あなたがたは、マスノートの存在を信じますか?」と。
すると、金持ちで悪いやつは、
「世の中金だ。金以外の物は信じない」
と答え、貧乏でいいやつは、
「僕は人の絆を一番大事にしている。それ以外は信じない」
と答えた。
その質問で、真実が見えたのか、マスノートはついに判断を下した。
「両者とも優れているとはいえない」
それが答えだった。
この時初めてわかったことなのだが、マスノートは両者とも劣っているという判断をすることもあるのだ。
世の中にマスノートが出回ってしまう前になんとか回収しようと、動き出す磯山。
しかし、成績も悪く運動もできない一人の少年が、マスノートを手にしてしまい・・・・・。
第二話 完
次回 「デスノート」「マスノート」、そして「デシタノート」