ネタ披露

秋田県 ペンネーム・TSUNAMU さんからの投稿作品
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この番組は、「オーマイ大戦争」(火木しげる原作)の提供でお送りします。

昼の連続ラジオ小説 第8話
「タイガー梅」 第2回

前回までのあらすじ
タラちゃんをなんとしても子役デビューさせたいと思い、劇団にいれることにしたサザエさん
劇団で頑張ったタラちゃんは、ついに初仕事をつかむことになったが、それはなんと日曜6時半のニュースの再現VTRの出演だった。
磯野家では連日、家族会議が開かれ、磯野家の伝統を守るべきか、それともタラちゃんの未来を優先するか、深夜まで話し合いは続いたのだった。
磯野家の動揺が、ご先祖様にも伝わったのか、それからしばらくの間、波平が茶髪に髪を染めたり、カツオがテストで100点を取ったりと、不思議な出来事が次々と続いた。
ついにワカメが派手な下着をつけはじめ、もうどうにもならないと思ったフネがとった最終手段とは・・・。




東大合格者が100名を超える名門・虎川高校で立ちあがった「虎川高校の未来を考える会」。
東大合格を第一に考える学校方針に迷いが生じはじめているのが、その理由だった。
そこに招かれていた、エスベル清掃賞を受賞したカリスマ掃除おばさん、梅田はあることを学校側に提案しようとしていた。

「皆さんは東大よりもすばらしい学校があることをご存知ですか?」
梅田は会議の参加者を見回しながら言った。
すると、ある紳士が続けた。
「東大よりもすばらしい学校?偏差値的には東大が一番なはずだし、それはもしかして海外の大学かね?」

梅田が言う。
「確かに、日本の大学よりも海外の大学の評価が高いといわれている部分があります。留学する人が多いのも事実です。でも、私が皆さんに紹介したい大学は、日本の大学です」
そして梅田は、ある大学のパンフレットをみんなに配り始めた。
すると会場から、あきれる声がわきあがった。

「中立TSUNAMU大学?どうせどっかの三流大学が名前に困って、派手な名前にこだわってつけたんだろ」
「中立TSUNAMU大学なんて聞いたことないわ。こんな無名の大学が、あの東大よりすばらしいはずなんてないわ」

梅田は笑っていた。今から30分後には、みんなツナ大に興味をもち始める。
馬鹿にしている人間が、賛同の声をあげる、その様子を想像すると、声を大にして笑いたい気分だった。
梅田が言う。

「国公立大や私大と違って、今までおおやけにされてこなかったので、皆さんがご存知ないのもしょうがないことと思います。
ここで中立TSUNAMU大学の説明をさせていただきたいと思います。
中立TSUNAMU大学は、名前の通り、全国初の中立大学です。

学部も、設立の際、地域色の強いものにするか、国際化に対応したものにするかとか、さんざん議論されたのですが、結局は中立というものを全面に押し出そうということになり、『5分5部』という学部1つで現在は運営されています。
『5分5部』の特色としては、教員が全員スイス人であることがあげられます。
教育目標は、『あいつのこと大嫌いなんだけど、大好き』『冬で寒いんだけどアイスが食べたい』などという曖昧な気持ちに説得力をもたせる力を4年間で培うことです」

すると会議に参加している人が言った。
「5分5部?あんたは大人を馬鹿にしてるのか。そもそも中立であるかどうかなんて、個人の問題だろ。例えその人間が偏った人間であったとしても、周りの人間と同じように勉強を教えてくれるのが、大学の良さじゃないか」
会議室上に、「そうだ、そうだ」の声があふれた。

しかし、中には梅田の発言に関心をよせる人間もいた。
「皆さん、もうちょっと梅田先生の意見を聞いてみようじゃないですか。虎川高校はこのままではダメなんです。梅田先生の話を全部は受け入れられないとしても、参考になるところはどんどん取り入れていくべきだと思うんです」

梅田は続ける。
「中立TSUNAMU大学の講義科目ですが、『現役気象予報士による、天気予報はずしちゃった時のやるせなさ』『主婦歴20年の主婦が突然福引きで特賞を当て、おまけに主人も出世してしまった時のなんともいえない気持ち』などがあります。
いずれも、日常のなにげないヒトコマのリアリティにとことんこだわり、その一つ一つの出来事を肯定するわけでもなく、否定するわけでもなく、たとえ不安定な要素であっても、そういうのを認めてあげること、それに主眼を置くことに力を入れています。

なお、学生のうちから社会との関わりを体験しておこうということで、裁判所と魚屋で『さばく』仕事をするのも、必須科目となっています。
学生は将来サラリーマンになるかもしれない、あるいは公務員になるかもしれない、組織に属する人間であるならば、中立という目線から見える新しい景色を皆さんに伝えて欲しいし、出来ることなら紛争や核の問題とも向き合う世界的な仕事について欲しい、というのが中立TSUNAMU大学の願いなんです」

少しの間、会場がざわついたが、ある男性がみんなの意見を集約して言った。
「中立TSUNAMU大学。虎川高校の目標を今すぐそこに全部向けるというのは無茶な話だが、東大が無理そうな生徒に勧めてみるというのはいいかもしれない。校長、そういう方向でやってみるのはどうでしょうか?」
校長がうなずきかけた瞬間、梅田は怒ってみんなにどなりちらした。

「東大に合格できない生徒をツナ大に?そんな馬鹿な話はないですよ。
東大に合格できないような生徒が、ツナ大に合格できるわけがありません。
東大にも100%合格できるような生徒で、なおかつツナ大の特性にあった生徒に、1年間みっちり受験対策をしてもらって、それでもツナ大に合格できる可能性は5%です」

会場の中でどよめきが怒った。そして、ある女性が言った。
「そんなにツナ大は難しいの?そしたら我が校の進学率にも影響が出るし、なおさら勧められないわ」
梅田は言う。
「ツナ大は難しいだけじゃなく、入試が4年に1回なんです。次の入試は、2008年2月29日、うるう年の日です。
今すぐ、学校がツナ大を目指すことを決定し、2007年度からツナ大進学クラスを設置して取り組まないと、合格は無理です。
皆さん、議論を深めることも大事ですが、時間が限られているんです」

第8話 完
次回 ツナ大合格へ向けて